EC2 インスタンスタイプ解説!|ワークロード別選定術
はじめに
この記事はAWSでEC2のインスタンスタイプを初めて選ぶ方、またはインスタンスタイプの変更を検討しているけど何を選択すればいいかわからないという方に向けた記事です。
各インスタンスタイプがどういったものなのか、それぞれの比較、用途ごとに向いているインスタンスタイプなどを様々な角度から記載します。
結論
色々調べた結果は以降に書きますが、まずは結論用途別にまとめましたのでそれを載せておきます。
ワークロード | 小規模 | 中規模 | 大規模/本番 | ポイント |
---|---|---|---|---|
WordPress/ブログ | t4g.small | t4g.medium | m7g.large | トラフィック変動に強いT系がベスト |
企業Webアプリ | m6g.large | m7g.xlarge | m7i.2xlarge | 常時安定性能が必要 |
Django/Rails API | t4g.small | m6g.large | m7g.xlarge | バランス型が最適 |
MySQL/PostgreSQL | t4g.medium | r6g.large | r7g.xlarge | メモリ重視、Multi-AZ推奨 |
Redis/Memcached | r6g.large | r7g.xlarge | r7g.2xlarge | メモリ最適化必須 |
MongoDB/Cassandra | i4g.large | i4i.xlarge | i4i.4xlarge | ローカルSSDで高速I/O |
Elasticsearch | c7i.large | c7i.xlarge | c7i.4xlarge | CPU集約的 |
GitLab | t4g.medium | m6g.large | m7g.xlarge | 最低4GB RAMから |
CI/CDランナー | t4g.small | c6g.large | c7g.xlarge | バースト性能が有効 |
動画エンコード | c6g.xlarge | c7g.2xlarge | c7g.4xlarge | CPU性能が最優先 |
ML推論(軽量) | g5.xlarge | g5.2xlarge | inf2.xlarge | 専用推論チップでコスト削減 |
ML訓練(中規模) | g5.2xlarge | g5.12xlarge | p4d.24xlarge | GPU必須 |
LLM訓練/推論 | - | p5.48xlarge | p5e.48xlarge , p6-b200.48xlarge | 大規模GPUメモリ必要 (P5詳細) |
調査した観点
上記結論を出すにあたって以下の4つの観点でインスタンスタイプを調査しました。
基礎:インスタンスタイプの読み方
インスタンスタイプを選択するとき、まず混乱するのが名前の意味ですよね。最初に見た時は「こんなんわかるかい!」と思いました。
以下のようにちゃんと意味が込められているので、知っておくとそれだけで選択時の役に立ちます。
例: m7g.large
インスタンスの種類を示す
M = 汎用(Main/Moderate)数字が大きいほど新しい
最新世代ほど高性能・低価格特別な機能を示す
g = AWS Graviton (ARM)リソース量を示す
nano→micro→small→large...- g: AWS Graviton (ARM)
- a: AMD EPYC
- i: Intel Xeon
- d: ローカルNVMe SSD
- n: ネットワーク最適化
- e: Extra (メモリ/ストレージ増)
- z: 高周波数CPU
- flex: 柔軟なCPU使用率
プロセッサについて
次に意味不なのがプロセッサです。家庭用のIntelのCoreiシリーズとかRizenシリーズならちょっとくらい知ってるけど、、サーバ用のは知らん!って感じから始まるパターンが多いと思います。調べたので以下にまとめます。
💡 サーバー用CPUとパソコン用CPUの違い
- Intel Core i3/i5/i7/i9
- AMD Ryzen 3/5/7/9
- 4-16コア、8-64GB RAM
- 価格: 2-10万円
- Intel Xeon、AMD EPYC、AWS Graviton
- 16-128コア、数百GB〜数TB RAM
- 24時間365日稼働
- 高耐久性・高信頼性設計
→ AWSで借りるのは下のサーバー用CPU! 自分で買わずに時間単位で借りるイメージです。
最新:Graviton4 (第8世代: M8g, C8g, R8g)
第7世代: Graviton3 (M7g, C7g, R7g)
第6世代: Graviton2 (T4g, M6g, C6g, R6g)
クロック: 2.5-2.8GHz
※ スマホと同じARMアーキテクチャ。Amazonが独自設計したサーバー専用CPU
💡 T4gは2025年12月31日まで月750時間無料! Linux/コンテナで最高のコスパ!
参考: AWS Graviton GitHub | EC2 FAQ
最新:Xeon 6 (第8世代: R8i, C8i, M8i)
第6世代: Ice Lake (M6i, C6i, R6i)
クロック: 最大3.5GHz+
※ Core i7のサーバー版。データセンターで最も歴史が長い
- 最も幅広い互換性
- 豊富なインスタンスサイズ
- x86必須ソフトに最適
- AVX-512対応
- 15年以上のAWS実績
対応インスタンス: "i"付き (例: t3, m6i, c6i, r8i)
最新:第4世代 Genoa (M7a, C7a, R7a)
第6世代: Milan (M6a, C6a, R6a)
クロック: 最大3.7GHz
※ Ryzenのサーバー版。コスパでIntelに対抗
- Intelより最大10%安価
- 最大50%高性能 (M7a vs M6a)
- x86互換性保持
- コスパ重視に最適
- 高いコア数とL3キャッシュ
対応インスタンス: "a"付き (例: t3a, m7a, c7a, r7a)
参考: AWS/AMD パートナーページ
- x86必須ソフトがある: Intel Xeon または AMD EPYC
- Linux/コンテナ/オープンソース: AWS Graviton (コスト削減!)
- 既存システムの移行: 現在と同じアーキテクチャ
- 新規プロジェクト: Gravitonから始めるのが賢明
- 迷ったら: まずはGraviton (T4g) で試してみる → ダメなら他に変更
もうちょっと詳しく
世代別の詳細スペックも書いときます。
- 📊 コア数: 最大64コア
- ⚡ クロック: 3.9GHz (R7iz) [仕様]
- 💾 メモリ: DDR5-4800
- 🔄 帯域幅: 最大307GB/s
- 🎯 特徴: AVX-512、TME暗号化
対応: M7i、C7i、R7i、R7iz
節約術について
AWSには未来の料金を前払いすることでめちゃくちゃ安くなるReserved Instances みたいなものもあります。長く使うことがわかった段階でこの辺も活用することをおすすめします。
EC2ならこの3つの存在は頭に入れておきましょう。
料金プラン | 節約率 | 契約期間 | 支払い方法 | t3.micro料金例 | m7g.large料金例 | 適用シーン |
---|---|---|---|---|---|---|
On-Demand | - | なし | 時間単位 | $0.0104/h [料金] | $0.0816/h | 短期・開発・テスト |
Savings Plans (EC2) | 最大72%削減[公式] | 1年/3年 | 時間コミット($/h) | $0.0075/h | $0.052/h | 本番・安定ワークロード |
Reserved Instances | 最大75%削減[公式] | 1年/3年 | 全前払/一部/なし | $0.0065/h | $0.049/h | 特定インスタンス固定 |
Spot Instances | 最大90%削減[公式] | なし | 時間単位 | $0.0032/h | $0.024/h | 中断可能ワークロード |
- Compute Savings Plans: 最も柔軟性が高い。リージョン、インスタンスファミリー、OS変更可能。EC2/Lambda/Fargate適用 [詳細]
- EC2 Instance Savings Plans: 特定リージョン・ファミリーに制限。サイズ・OS変更可能。より高い割引率
- Reserved Instances: 最も制限的だが割引率最大。容量予約可能
先頭の t とか m とかの文字について
インスタンスファミリーってやつです。まとめました。
特徴: CPU・メモリ・ネットワークがバランス良く配分
メモリ比: 4GB/vCPU (M系)
用途: Webサーバー、中規模DB、開発環境
特徴: 高性能CPU、低めのメモリ比率
メモリ比: 2GB/vCPU
用途: バッチ処理、HPC、動画エンコード、ゲームサーバー
特徴: 大容量メモリ搭載
メモリ比: 8-16GB/vCPU
用途: インメモリDB、Redis、SAP HANA、ビッグデータ
特徴: 超高速ローカルストレージ(NVMe SSD)
I/O性能: 数百万IOPS、低レイテンシ
用途: NoSQL DB、分散FS、データウェアハウス
特徴: NVIDIA GPU、専用アクセラレータ (詳細)
性能: P5(H100 x8)、P5e/P5en(H200 x8)、P6-B200(B200 x8)など
用途: ML訓練、LLM、グラフィックス、AI推論
t系それぞれの違いとバーストクレジットについて
t系は種類が多くて、そしてバーストがどうとかクレジットを消費してどうとかってなんだ?ってなったのでこれもまとめておきました。
⚡ バーストパフォーマンスとは?
通常時は低いベースライン性能で動作し、CPUクレジットを貯蓄。必要時にクレジットを消費して100%性能まで瞬時にブースト可能!
t4g.small 推奨
AWS Graviton2 (ARM) 2.5GHz
- 💻 vCPU: 2
- 🧠 メモリ: 2 GB
- ⚡ ベースライン: 20%
- 💰 $0.0168/時間 (T3比20%安)
💚 Gravitonの利点: ARMアーキテクチャで高コスパ
t3.micro
Intel Skylake 3.1GHz
- 💻 vCPU: 2
- 🧠 メモリ: 1 GB
- ⚡ ベースライン: 10%
- 💰 $0.0104/時間
用途: 開発環境、個人ブログ
t3.small
Intel Skylake 3.1GHz
- 💻 vCPU: 2
- 🧠 メモリ: 2 GB
- ⚡ ベースライン: 20%
- 💰 $0.0208/時間
用途: 小規模Webアプリ
✅ Unlimited Mode (デフォルト)
- クレジット不足でも性能制限なし
- 24時間平均がベースライン以下なら追加料金なし
- 超過時: T3は$0.05/vCPU-時、T4gは$0.04/vCPU-時
🔒 Standard Mode
- クレジット残高の範囲内でバースト
- クレジット枯渇時はベースライン性能に制限
- 予測可能なコストが必要な場合に最適
最後に:インスタンス選択フローチャート
あなたの条件に合うインスタンス対応選択のためのフローチャートを載せておきます。
負荷パターンは?
- 断続的・低〜中程度 → T系 (バースト可能)
- 常時安定 → 次へ
何がボトルネック?
- CPU性能 → C系 (Compute)
- メモリ容量 → R/X系 (Memory)
- I/O性能 → I/D系 (Storage)
- GPU/並列処理 → P/G/Inf系
- バランス良く → M系 (General)
プロセッサーは?
- x86必須 → Intel(i) or AMD(a)
- Linux/コンテナ → Graviton(g) 推奨!
世代とサイズ
- 最新世代を選択 (数字が大きい)
- small → medium → large と段階的に
- 本番前に負荷テストで確認
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