EC2 インスタンスタイプ解説!|ワークロード別選定術
AWS 11 min read

EC2 インスタンスタイプ解説!|ワークロード別選定術

my-icon

karrinn

著者

はじめに

この記事はAWSでEC2のインスタンスタイプを初めて選ぶ方、またはインスタンスタイプの変更を検討しているけど何を選択すればいいかわからないという方に向けた記事です。

各インスタンスタイプがどういったものなのか、それぞれの比較、用途ごとに向いているインスタンスタイプなどを様々な角度から記載します。

結論

色々調べた結果は以降に書きますが、まずは結論用途別にまとめましたのでそれを載せておきます。

ワークロード小規模中規模大規模/本番ポイント
WordPress/ブログt4g.smallt4g.mediumm7g.largeトラフィック変動に強いT系がベスト
企業Webアプリm6g.largem7g.xlargem7i.2xlarge常時安定性能が必要
Django/Rails APIt4g.smallm6g.largem7g.xlargeバランス型が最適
MySQL/PostgreSQLt4g.mediumr6g.larger7g.xlargeメモリ重視、Multi-AZ推奨
Redis/Memcachedr6g.larger7g.xlarger7g.2xlargeメモリ最適化必須
MongoDB/Cassandrai4g.largei4i.xlargei4i.4xlargeローカルSSDで高速I/O
Elasticsearchc7i.largec7i.xlargec7i.4xlargeCPU集約的
GitLabt4g.mediumm6g.largem7g.xlarge最低4GB RAMから
CI/CDランナーt4g.smallc6g.largec7g.xlargeバースト性能が有効
動画エンコードc6g.xlargec7g.2xlargec7g.4xlargeCPU性能が最優先
ML推論(軽量)g5.xlargeg5.2xlargeinf2.xlarge専用推論チップでコスト削減
ML訓練(中規模)g5.2xlargeg5.12xlargep4d.24xlargeGPU必須
LLM訓練/推論-p5.48xlargep5e.48xlarge, p6-b200.48xlarge大規模GPUメモリ必要 (P5詳細)

調査した観点

上記結論を出すにあたって以下の4つの観点でインスタンスタイプを調査しました。

💻

インスタンスタイプ

🏭
5大ファミリー

汎用・演算・メモリ・ストレージ・GPU

🚀
3大プロセッサー

Intel・AMD・AWS Graviton(ARM)

💰
最大90%

Spot Instancesでの割引率

基礎:インスタンスタイプの読み方

インスタンスタイプを選択するとき、まず混乱するのが名前の意味ですよね。最初に見た時は「こんなんわかるかい!」と思いました。

以下のようにちゃんと意味が込められているので、知っておくとそれだけで選択時の役に立ちます。

例: m7g.large

m
ファミリー

インスタンスの種類を示す

M = 汎用(Main/Moderate)
7
世代

数字が大きいほど新しい

最新世代ほど高性能・低価格
g
追加機能

特別な機能を示す

g = AWS Graviton (ARM)
.large
サイズ

リソース量を示す

nano→micro→small→large...
📖 追加機能の文字一覧
  • g: AWS Graviton (ARM)
  • a: AMD EPYC
  • i: Intel Xeon
  • d: ローカルNVMe SSD
  • n: ネットワーク最適化
  • e: Extra (メモリ/ストレージ増)
  • z: 高周波数CPU
  • flex: 柔軟なCPU使用率
参考: AWS公式ドキュメント

プロセッサについて

次に意味不なのがプロセッサです。家庭用のIntelのCoreiシリーズとかRizenシリーズならちょっとくらい知ってるけど、、サーバ用のは知らん!って感じから始まるパターンが多いと思います。調べたので以下にまとめます。

💡 サーバー用CPUとパソコン用CPUの違い
🖥️ パソコン用(個人向け)
  • Intel Core i3/i5/i7/i9
  • AMD Ryzen 3/5/7/9
  • 4-16コア、8-64GB RAM
  • 価格: 2-10万円
☁️ サーバー用(クラウド/企業向け)
  • Intel Xeon、AMD EPYC、AWS Graviton
  • 16-128コア、数百GB〜数TB RAM
  • 24時間365日稼働
  • 高耐久性・高信頼性設計

→ AWSで借りるのは下のサーバー用CPU! 自分で買わずに時間単位で借りるイメージです。

AWS Graviton (ARM) 推奨

最新:Graviton4 (第8世代: M8g, C8g, R8g)

第7世代: Graviton3 (M7g, C7g, R7g)

第6世代: Graviton2 (T4g, M6g, C6g, R6g)

クロック: 2.5-2.8GHz

※ スマホと同じARMアーキテクチャ。Amazonが独自設計したサーバー専用CPU

✅ メリット
  • 最大20%安価 (AWS公式)
  • 同等以上の性能
  • 最大60%低消費電力 (AWS公式)
  • 最新世代が使える

💡 T4gは2025年12月31日まで月750時間無料! Linux/コンテナで最高のコスパ!

参考: AWS Graviton GitHub | EC2 FAQ

Intel Xeon (ジーオン)

最新:Xeon 6 (第8世代: R8i, C8i, M8i)

第6世代: Ice Lake (M6i, C6i, R6i)

クロック: 最大3.5GHz+

※ Core i7のサーバー版。データセンターで最も歴史が長い

✅ メリット
  • 最も幅広い互換性
  • 豊富なインスタンスサイズ
  • x86必須ソフトに最適
  • AVX-512対応
  • 15年以上のAWS実績

対応インスタンス: "i"付き (例: t3, m6i, c6i, r8i)

参考: AWS/Intel パートナーページ

AMD EPYC (エピック)

最新:第4世代 Genoa (M7a, C7a, R7a)

第6世代: Milan (M6a, C6a, R6a)

クロック: 最大3.7GHz

※ Ryzenのサーバー版。コスパでIntelに対抗

✅ メリット
  • Intelより最大10%安価
  • 最大50%高性能 (M7a vs M6a)
  • x86互換性保持
  • コスパ重視に最適
  • 高いコア数とL3キャッシュ

対応インスタンス: "a"付き (例: t3a, m7a, c7a, r7a)

参考: AWS/AMD パートナーページ

🤔 どれを選ぶべき?
  • x86必須ソフトがある: Intel Xeon または AMD EPYC
  • Linux/コンテナ/オープンソース: AWS Graviton (コスト削減!)
  • 既存システムの移行: 現在と同じアーキテクチャ
  • 新規プロジェクト: Gravitonから始めるのが賢明
  • 迷ったら: まずはGraviton (T4g) で試してみる → ダメなら他に変更

もうちょっと詳しく

世代別の詳細スペックも書いときます。

AWS Graviton4
Neoverse-V2
  • 📊 コア数: 最大96コア [GitHub]
  • クロック: 2.8GHz
  • 💾 メモリ: DDR5-5600
  • 🔄 帯域幅: 最大536GB/s
  • 🎯 特徴: 12ch、ARMv9

対応: M8g、C8g、R8g [公式]

Intel Xeon (第4世代)
Sapphire Rapids
  • 📊 コア数: 最大64コア
  • クロック: 3.9GHz (R7iz) [仕様]
  • 💾 メモリ: DDR5-4800
  • 🔄 帯域幅: 最大307GB/s
  • 🎯 特徴: AVX-512、TME暗号化

対応: M7i、C7i、R7i、R7iz

AMD EPYC (第4世代)
Genoa 9R14
  • 📊 コア数: 最大96コア [AMD]
  • クロック: 3.7GHz
  • 💾 メモリ: DDR5-4800
  • 🔄 帯域幅: 最大460GB/s
  • 🎯 特徴: 12ch メモリ

対応: M7a、C7a、R7a [AWS]

⚡ パフォーマンス比較
  • Graviton4 vs Graviton3: 30%性能向上、50%多いコア、75%高いメモリ帯域幅 [AWS発表]
  • Graviton4 vs x86: 同等性能で20-40%低価格、60%省電力 [AWS公式]
  • DDR5 vs DDR4: 50%高い帯域幅、2.4倍のメモリスループット(R7izの場合)

節約術について

AWSには未来の料金を前払いすることでめちゃくちゃ安くなるReserved Instances みたいなものもあります。長く使うことがわかった段階でこの辺も活用することをおすすめします。

EC2ならこの3つの存在は頭に入れておきましょう。

料金プラン節約率契約期間支払い方法t3.micro料金例m7g.large料金例適用シーン
On-Demand-なし時間単位$0.0104/h [料金]$0.0816/h短期・開発・テスト
Savings Plans (EC2)最大72%削減[公式]1年/3年時間コミット($/h)$0.0075/h$0.052/h本番・安定ワークロード
Reserved Instances最大75%削減[公式]1年/3年全前払/一部/なし$0.0065/h$0.049/h特定インスタンス固定
Spot Instances最大90%削減[公式]なし時間単位$0.0032/h$0.024/h中断可能ワークロード
※価格は米国東部(バージニア北部)、Linux/Unix、2025年1月時点の参考価格
💡 Savings Plans vs Reserved Instances
  • Compute Savings Plans: 最も柔軟性が高い。リージョン、インスタンスファミリー、OS変更可能。EC2/Lambda/Fargate適用 [詳細]
  • EC2 Instance Savings Plans: 特定リージョン・ファミリーに制限。サイズ・OS変更可能。より高い割引率
  • Reserved Instances: 最も制限的だが割引率最大。容量予約可能

先頭の t とか m とかの文字について

インスタンスファミリーってやつです。まとめました。

💼 General Purpose
汎用 - バランス型
T系M系

特徴: CPU・メモリ・ネットワークがバランス良く配分

メモリ比: 4GB/vCPU (M系)

用途: Webサーバー、中規模DB、開発環境

⚡ Compute Optimized
演算最適化 - CPU集約型
C系

特徴: 高性能CPU、低めのメモリ比率

メモリ比: 2GB/vCPU

用途: バッチ処理、HPC、動画エンコード、ゲームサーバー

🧠 Memory Optimized
メモリ最適化 - メモリ集約型
R系X系

特徴: 大容量メモリ搭載

メモリ比: 8-16GB/vCPU

用途: インメモリDB、Redis、SAP HANA、ビッグデータ

💾 Storage Optimized
ストレージ最適化 - I/O集約型
I系D系

特徴: 超高速ローカルストレージ(NVMe SSD)

I/O性能: 数百万IOPS、低レイテンシ

用途: NoSQL DB、分散FS、データウェアハウス

🎮 Accelerated Computing
GPU/AI特化 - 並列処理
P系G系Inf系

特徴: NVIDIA GPU、専用アクセラレータ (詳細)

性能: P5(H100 x8)、P5e/P5en(H200 x8)、P6-B200(B200 x8)など

用途: ML訓練、LLM、グラフィックス、AI推論

t系それぞれの違いとバーストクレジットについて

t系は種類が多くて、そしてバーストがどうとかクレジットを消費してどうとかってなんだ?ってなったのでこれもまとめておきました。

⚡ バーストパフォーマンスとは?

通常時は低いベースライン性能で動作し、CPUクレジットを貯蓄。必要時にクレジットを消費して100%性能まで瞬時にブースト可能!

t4g.small 推奨

AWS Graviton2 (ARM) 2.5GHz

  • 💻 vCPU: 2
  • 🧠 メモリ: 2 GB
  • ⚡ ベースライン: 20%
  • 💰 $0.0168/時間 (T3比20%安)

💚 Gravitonの利点: ARMアーキテクチャで高コスパ

特典:2025年末まで750h/月 無料

t3.micro

Intel Skylake 3.1GHz

  • 💻 vCPU: 2
  • 🧠 メモリ: 1 GB
  • ⚡ ベースライン: 10%
  • 💰 $0.0104/時間

用途: 開発環境、個人ブログ

t3.small

Intel Skylake 3.1GHz

  • 💻 vCPU: 2
  • 🧠 メモリ: 2 GB
  • ⚡ ベースライン: 20%
  • 💰 $0.0208/時間

用途: 小規模Webアプリ

📊 CPUクレジットシステム
✅ Unlimited Mode (デフォルト)
  • クレジット不足でも性能制限なし
  • 24時間平均がベースライン以下なら追加料金なし
  • 超過時: T3は$0.05/vCPU-時、T4gは$0.04/vCPU-時
🔒 Standard Mode
  • クレジット残高の範囲内でバースト
  • クレジット枯渇時はベースライン性能に制限
  • 予測可能なコストが必要な場合に最適

最後に:インスタンス選択フローチャート

あなたの条件に合うインスタンス対応選択のためのフローチャートを載せておきます。

STEP 1
負荷パターンは?
  • 断続的・低〜中程度 → T系 (バースト可能)
  • 常時安定 → 次へ
STEP 2
何がボトルネック?
  • CPU性能 → C系 (Compute)
  • メモリ容量 → R/X系 (Memory)
  • I/O性能 → I/D系 (Storage)
  • GPU/並列処理 → P/G/Inf系
  • バランス良く → M系 (General)
STEP 3
プロセッサーは?
  • x86必須 → Intel(i) or AMD(a)
  • Linux/コンテナ → Graviton(g) 推奨!
STEP 4
世代とサイズ
  • 最新世代を選択 (数字が大きい)
  • small → medium → large と段階的に
  • 本番前に負荷テストで確認

関連トピック

コメント (0)

まだコメントはありません。最初のコメントを残しませんか?

コメントを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。必須項目には * が付いています