AIが次の時代へ?Transformerが変え、動画AIが変える世界
AIが次の時代へ?
ChatGPTの進化は偶然じゃない。たった2つの論文が、AIの歴史を根本から変えた。
2017年の革命
Google発の論文「Attention Is All You Need」が、すべての始まりだった。この8ページの論文が、ChatGPT、GPT-4、そして現代のすべての生成AIの土台を作った。
2025年の予兆
Google DeepMindの「Video Models are Zero-Shot Learners」が、画像・動画AIの新時代を予告。LLMと同じ革命が、今度はビジョンAIで起きようとしている。
この記事で分かること
ChatGPTを生んだTransformerの仕組み
なぜAIは急速に進化したのか
動画生成AIの次世代技術
AGI実現の現実的なタイムライン
エンジニアが今すべき準備
AI史に残る重要論文の紹介
ChatGPT、使ってますよね?
2022年11月から世界が変わりました。その爆発的な普及の背景には、2017年に発表されたたった1本の論文があります。AI史を変えた2つの革命的な論文を、深く掘り下げていきましょう。
2022年11月、ChatGPTが公開されてから世界は変わりました。わずか5日でユーザー数100万人、2ヶ月で1億人を突破。この爆発的な普及の背景には、実は2017年に発表されたたった1本の論文があります。
そして2025年9月、また新たな革命が静かに始まりました。Google DeepMindが発表した論文が、今度は画像・動画の世界で同じ革命を起こそうとしています。
この記事では、AI史を変えた2つの論文を深掘りし、私たちエンジニアがどう備えるべきかを考えていきます。
第一の革命:Attention Is All You Need(2017年)
すべてはこの論文から始まった。TransformerというアーキテクチャがAIの世界を根本から変えた瞬間。
論文の革新性
2017年6月、Googleの研究チームが発表した「Attention Is All You Need」は、わずか8ページの論文でした。しかしこの論文が提案したTransformerアーキテクチャは、自然言語処理の歴史を完全に書き換えました。
それまでのAIは、文章を一語ずつ順番に処理するRNN(リカレントニューラルネットワーク)を使っていました。これには致命的な問題がありました。長い文章になると前の方の内容を忘れてしまう、処理が遅い、大規模化が難しい。
Transformerはこれらの問題をすべて解決しました。Self-Attention(自己注意機構)という仕組みで、文章内のすべての単語が同時に他の単語を「見る」ことができるようになったのです。
技術的ブレークスルー
Transformerの核心は3つの革新にあります。
並列処理:すべての単語を同時に処理できるため、GPUを最大限活用できる
Self-Attention:文章内のどの単語とどの単語が関連しているかを自動で学習
スケーラビリティ:データとパラメータを増やせば増やすほど性能が向上
論文では、機械翻訳タスクで当時の最高精度を上回り、しかも学習時間は従来の12分の1という驚異的な結果を示しました。
Transformerが生んだAIの系譜
たった1つの論文が、GPT、BERT、そして現代のすべての生成AIを生み出しました。Transformerがいかに多くのAIモデルの土台となったかを見ていきます。
2018年:GPT(1億1700万パラメータ)
OpenAIが最初のGPTを発表。「事前学習+ファインチューニング」という手法で12個のデータセットのうち9個で当時の最高精度を達成。Transformerの実用性を証明した瞬間でした。
2018年:BERT(3億4000万パラメータ)
Googleが発表した双方向Transformer。文脈を前後両方から理解する能力で、検索エンジンの精度を劇的に向上させました。2019年、GoogleはBERTを検索アルゴリズムに統合し、検索体験を変革しました。
2019年:GPT-2(15億パラメータ)
パラメータ数を10倍以上に拡大。「規模を大きくすれば性能が上がる」というスケーリング則を実証。あまりに高性能だったため、当初OpenAIは「悪用の可能性」を理由に完全版の公開を躊躇しました。
2020年:GPT-3(1750億パラメータ)
さらに100倍以上のスケールアップ。Few-Shot学習(数例見せるだけで新しいタスクを実行)という驚異的な能力を獲得。「創発的能力(Emergent Abilities)」という概念が注目されました。規模が一定を超えると、明示的に教えていない能力が突然現れるのです。
2022年:ChatGPT(GPT-3.5、3550億パラメータ)
RLHF(人間のフィードバックからの強化学習)により、ユーザーの意図を理解し安全に応答するAIが誕生。チャットUIという革新的なインターフェースで、誰でも使えるAIになりました。公開5日で100万ユーザー、2ヶ月で1億ユーザーという史上最速の普及を記録。
そして2023年3月、GPT-4が登場。マルチモーダル対応、司法試験で上位10%のスコア、医療診断支援など、もはや「人間レベル」という表現が現実味を帯び始めました。
Transformerの何がそんなに凄いのか
革命的な利点
並列処理可能:GPUを最大限活用、学習が劇的に高速化
長距離依存関係:文章の最初と最後の関係も正確に捉える
スケーラブル:データとパラメータを増やせば性能が向上し続ける
汎用性:テキスト、画像、音声、動画すべてに適用可能
従来手法の限界
RNNの問題:逐次処理で遅い、長文で精度低下
CNNの問題:局所的なパターンしか見られない
スケーリング困難:大規模化してもあまり性能が上がらない
タスク特化:新しいタスクごとに専用モデルが必要
スケーリング則:大きくすれば強くなる
2020年の発見が、AI開発のルールを変えました。モデルのサイズと性能の関係が数式で予測できる。この法則が、巨大AIモデル競争の引き金となったのです。
2020年、OpenAIの研究チームは「Scaling Laws for Neural Language Models」という論文で、驚くべき発見を発表しました。
モデルのサイズ、データ量、計算量と性能の関係が数式で予測できるというのです。つまり、どれくらいの規模にすればどれくらいの性能になるか、事前に計算できるようになったのです。
10×
パラメータを10倍にすると損失が約半分に
100×
データを100倍にすると性能が2段階向上
1000×
計算量1000倍で創発的能力が出現
第二の革命:Video Models are Zero-Shot Learners(2025年)
今度は動画AIが、LLMと同じ道を歩もうとしている。Google DeepMindの最新研究が示す、ビジョンAIの未来。
LLMの成功は偶然ではなかった
2025年9月24日、Google DeepMindが発表した論文「Video models are zero-shot learners and reasoners」は、衝撃的な主張をしています。
「大規模な生成モデルをウェブスケールのデータで訓練する」というシンプルな手法が、LLMを汎用的な基盤モデルに変えた。同じ手法が、今度は動画モデルでも機能すると。
Veo 3という動画生成モデルは、明示的に訓練されていない60以上のビジュアルタスク(セグメンテーション、エッジ検出、画像編集、物理シミュレーション、道具の使用など)をゼロショットで実行できることが実証されました。
これはまさに、GPT-3がFew-Shot学習で示した能力と同じパターンです。規模を大きくすれば、教えていないタスクも実行できるようになる。
Chain-of-Frames:動画AIの「思考」
LLMが思考の連鎖で複雑な問題を解くように、動画AIはフレームの連鎖で視覚的推論を行います。この「見える思考」が、AIに新たな次元の能力をもたらすのです。
LLMのChain-of-Thought(思考の連鎖)
LLMは複雑な問題を解くとき、ステップバイステップで考えることができます。「まず...、次に...、したがって...」という形で推論を進める能力です。
例:「5個のりんごを持っていて、3個のりんごを2袋買いました。今何個持っていますか?」→「最初5個、2袋×3個=6個追加、合計11個」
動画AIのChain-of-Frames(フレームの連鎖)
Veo 3は、生成する動画のフレーム間の連続性を利用して、視覚的な推論を行います。迷路を解いたり、対称性の問題を解いたり、物理法則を理解したりできるのです。
例:迷路の画像を入力すると、Veo 3は出口に向かう経路をフレームごとに生成し、視覚的に「推論」して解を示します。
これは単なるパターン認識ではありません。時間と空間の次元で世界を操作し、因果関係を理解し、物理法則に従った変化を予測する能力なのです。
知覚(Perception)
物体のセグメンテーション、エッジ検出、キーポイント検出、深度推定など、古典的なコンピュータビジョンタスクをゼロショットで実行
例:ダルメシアンの錯視画像を正しく解釈
モデリング(Modeling)
物理法則の理解、剛体・軟体の動力学、可燃性、空気抵抗、浮力など、現実世界の物理をシミュレート
例:物体を水に落としたときの挙動を予測
操作(Manipulation)
背景除去、スタイル変換、色付け、インペインティング、アウトペインティング、新規視点生成など
例:物体を異なる角度から見た画像を生成
推論(Reasoning)
迷路の解決、対称性の発見、ルールの外挿、ナビゲーション、視覚的な論理パズル
例:複雑な迷路の最短経路を見つける
なぜこれがゲームチェンジャーなのか
単一のモデルですべてのビジュアルタスクを処理する。それは、コンピュータビジョンの世界に訪れる「LLM革命」と同じパラダイムシフトです。その衝撃の大きさを、具体的な応用例で見ていきましょう。
現在のコンピュータビジョンは、タスクごとに専用モデルが必要です。セグメンテーション用のモデル、物体検出用のモデル、深度推定用のモデル...それぞれが独立して開発され、デプロイされています。
Veo 3のような動画基盤モデルが実用化されれば、単一のモデルですべてのビジュアルタスクを処理できるようになります。これはまさに、LLMが翻訳、要約、質問応答などを単一モデルで処理できるようになったのと同じパラダイムシフトです。
自動運転
物体検出、車線認識、距離推定、動き予測を単一モデルで処理。しかも物理法則を理解しているため、より安全な判断が可能に。
ロボティクス
環境認識、道具の使用、物理的制約の理解を統合。ゼロショットで新しい道具の使い方を学習できる可能性。
コンテンツ制作
動画編集、特殊効果、3Dモデリングが自然言語指示だけで可能に。クリエイターの生産性が桁違いに向上。
ただし、課題も残る
論文でも認められているように、タスク特化モデルはまだゼロショット動画モデルを上回っています。しかし、Veo 2からVeo 3への進化を見ると、性能改善のペースは急速です。
もう一つの大きな課題は計算コストです。動画処理はテキスト処理よりも桁違いに重いため、推論コストが高額になります。ただし、LLMと同様に、スケールメリットと最適化技術の進歩により、コストは急速に下がると予測されています。
重要な問題:学習データの出典と著作権。Veo 3はYouTubeの動画で訓練された可能性が高く、クリエイターの同意やオプトアウトの仕組みについて議論が必要です。
AGI実現は本当に目前なのか
楽観派は「2026年」、慎重派は「不可能」と主張します。予測市場は4年で「50年後」から「2031年」へ大幅短縮。では、真実はどこにあるのでしょうか。
2つの論文が示すのは、AIの進化が予測可能で加速しているということ。では、人間レベルの汎用AI(AGI)はいつ実現するのでしょうか。
楽観派の予測
サム・アルトマン(OpenAI CEO):2025年にもAGIが到来する可能性
ダリオ・アモデイ(Anthropic CEO):2026年までに実現
レイ・カーツワイル:2029年にAGI、2045年にシンギュラリティ
OpenAIの5段階理論:現在レベル3(エージェント)、レベル5がAGI
慎重派の見解
ヤン・ルカン(Meta):現在のアプローチではAGIは実現しない
アンドリュー・ング:近い将来は懐疑的、生きている間に見られるかも不明
2024年研究者調査:76%が「スケーリングだけではAGI不可」
技術的課題:常識推論、創造性、感情理解は依然として困難
予測市場の動向
Metaculus(予測市場)の中央値は、わずか4年で「AGIまで50年」から「2031年までに50%の確率」まで短縮されました。
シンギュラリティは「穏やか」にやってくる
劇的な変化の瞬間ではなく、徐々に確実に訪れる革命。サム・アルトマンが語る「The Gentle Singularity」は、私たちに何を告げているのでしょうか。
2025年6月、サム・アルトマンは「The Gentle Singularity(穏やかな特異点)」というブログ記事を公開しました。
従来のシンギュラリティ理論では、AIが人間の知能を超えた瞬間に世界が劇的に変わると考えられていました。しかしアルトマンは、変化は徐々に、しかし確実に起きていると指摘します。
現在の状況(2025年)
平均的な人間より賢いAIが普及
科学研究に活用され始めた
でも、まだ人間は病気で死ぬ
ロボットは街を歩いていない
近い将来(2027-2030年)
AIが新薬を設計
AIが複雑な問題を解決
でも、急激な混乱は起きない
人間とAIが協働する時代
重要なのは、準備する時間はまだあるということです。しかし、ぼんやりしていられる時間は残り少ない。
AIの歴史を変えたその他の重要論文
Transformerと動画AIだけではありません。Chain-of-Thought、RLHF、RAGなど、AI進化を支えた重要論文を押さえておきましょう。
Chain-of-Thought Prompting(2022年)
革新性:「ステップバイステップで考えましょう」と指示するだけで、複雑な推論問題の正答率が劇的に向上することを発見。
影響:GPT-4、Claude、Geminiなどすべての主要LLMで標準テクニックに。プロンプトエンジニアリングの重要性を確立。
参考:Chain-of-Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models(arXiv)
RLHF(人間のフィードバックからの強化学習)
革新性:人間の好みを学習させることで、AIを安全で有用な方向に誘導。InstructGPT、ChatGPTで採用。
影響:「賢いけど使いにくい」AIから「賢くて使いやすい」AIへの転換点。ユーザー体験を劇的に改善。
参考:Training language models to follow instructions with human feedback(arXiv)
Retrieval-Augmented Generation(RAG、2020年)
革新性:外部知識ベースを検索してから回答を生成することで、ハルシネーションを削減し、最新情報に対応。
影響:企業向けAIアプリケーションの標準アーキテクチャに。Perplexity、Bing Chat、Google SGEなどで採用。
参考:Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks(arXiv)
Diffusion Models(2020-2022年)
革新性:ノイズから徐々に画像を生成する新しいアプローチ。GANを超える品質と安定性を実現。
影響:Stable Diffusion、DALL-E 2、Midjourney、Imagenなど、すべての主要画像生成AIのベース技術に。
データで見るAIの進化
数字が語るAIの爆発的成長。パラメータ数の推移から、進化のペースを視覚的に理解しましょう。
図:GPTシリーズのパラメータ数推移(対数スケール)
出典: OpenAI公式発表、各種技術論文
日本企業のAI活用は加速している
「日本は遅れている」はもう古い。2024-2025年、日本企業のAI導入率は50%を超え、34兆円の経済効果が見込まれています。
「日本は遅れている」と言われますが、実は2024-2025年で劇的に変化しています。
50%+
ソフトウェア開発での生成AI導入率
2025年調査
34兆円
2025年までの経済効果予測
中小企業庁試算
30%
業務効率化の平均向上率
導入企業実績
主要日本企業の生成AI活用事例
製造業
トヨタ:2030年までに5,000億円投資、モビリティAI基盤開発
パナソニック:AIアシスタント導入で1日5,000回利用、モーター設計に活用
オムロン:言語指示で動作するロボット開発
IT・サービス
NTTデータ:ソフトウェア開発全工程でAI活用、製造・設計・PMで適用増
リクルート:スタディサプリでAI個別学習機能を提供
ファーストリテイリング:AI需要予測システムで在庫最適化
GoogleがついにAI戦争で反撃に転じた
Transformerを発明しながら、ChatGPTに先を越された屈辱。しかし2025年、Gemini 2.0、Veo 3、AlphaFold 3で反撃開始。Googleが「次の戦場」で主導権を握る理由とは。
ChatGPT登場以降、GoogleはOpenAIに後れを取っていました。しかし2025年、状況が変わりつつあります。
2022-2023年:Googleの苦境
ChatGPT登場でGoogleの検索独占が脅威に
Bardの初期デモで株価8%下落(1,000億ドル喪失)
「検索の未来」でMicrosoftに先を越される
Transformerを発明したのはGoogleなのに...
2025年:Googleの反撃
Gemini 2.0:マルチモーダル性能でGPT-4を凌駕
Veo 3:動画生成でOpenAIのSoraに先行
AlphaFold 3:科学研究でノーベル賞級の成果
検索AI統合:AI Overviewで検索体験を再定義
なぜGoogleが巻き返せたのか
技術的優位性
Transformerの発明者が社内にいる
世界最大規模のデータセンター
YouTubeという最強の動画データ
戦略的転換
「慎重すぎた」姿勢を改め積極展開
DeepMindとGoogle Brainを統合
研究成果の迅速な製品化
重要な示唆
Veo 3の論文が示すのは、Googleが単に追いついただけではなく、「次の戦場」で先手を打ったということ。LLMの戦いはOpenAIが先行したが、動画基盤モデルの戦いはGoogleが主導権を握ろうとしている。これは2017年のTransformer論文と同じパターンかもしれない。
次の波:Gemini 3への期待
Googleの反撃は始まったばかり。2025年末から2026年初頭に予想されるGemini 3.0は、AI競争の地図を再び塗り替える可能性を秘めている。
噂される革新的アーキテクチャ
業界の内部情報によれば、Gemini 3 Proは「動的Mixture-of-Experts(MoE)」という次世代アーキテクチャを採用すると言われています。
2〜4兆パラメータの総規模(ただし各クエリでは150〜200億のみ活性化)
タスクに応じて最適な「専門家」モデルを動的に選択
計算効率を保ちながら、スケールのメリットを最大化
これは、GPT-4の推定1.8兆パラメータを大きく超える規模です。
期待される性能向上
リアルタイム処理
60FPSでの動画解析が可能になり、ライブストリーミングやビデオ会議でのリアルタイムAI支援が実現
統合推論機能
「Deep Think」モードが標準統合され、複雑な問題を自動的に段階的推論で解決
超大規模コンテキスト
数百万トークンの処理が可能になり、書籍数冊分のドキュメントを一度に理解
予想されるリリースタイムライン
2025年12月
プレビュー版
(エンタープライズユーザー向け)
2026年Q1
開発者向けAPI公開
(一般開発者アクセス)
2026年Q1-Q2
コンシューマー版公開
(Gemini Appへの統合)
※Googleの過去のリリースパターン(Gemini 1.0: 2023年12月、Gemini 2.0: 2024年12月)に基づく予測
Gemini 2.5:現在最強クラスのAIモデル
数学で86.7%、100万トークンのコンテキスト、そして最高のコストパフォーマンス。Gemini 2.5は、すでに現在最強クラスの実力を見せています。
Gemini 3の登場を待つ間、2025年3月にリリースされたGemini 2.5はすでに驚異的な性能を発揮しています。
86.7%
AIME 2025(数学)
外部ツールなしで高度な数学問題を解決。GPT-5の94.6%に次ぐ高スコア。
100万
トークン(コンテキスト長)
約1,500ページの文書を一度に処理可能。将来的には200万トークンへ拡張予定。
$1.25
100万入力トークンあたり
Claude 4($3)やGPT-4o($2.50)と比較して最もコストパフォーマンスが高い。
主要AIモデルの性能比較(2025年10月版)
モデル | 数学推論 (AIME 2025) | コーディング (SWE-bench) | 一般知識 (MMLU) | コンテキスト長 | 料金 (入力/出力) | 得意分野 |
---|---|---|---|---|---|---|
GPT-5 2025/08 | 94.6% | 72.8% | 90.2% | 128K | $1.25/$10 | 推論・会話・コスパ |
Claude Sonnet 4.5 2025/09 | 85%台 | 77.2% (82.0%*) | 85-86% | 200K | $3/$15 | コーディング・エージェント |
Gemini 2.5 Pro 2025/03 | 86.7% | 63.8% | 85-86% | 1M(200万予定) | $1.25/$10 | 数学・文書分析・マルチモーダル |
Claude Opus 4.1 2025/08 | 80%台 | 74.5% | 85-86% | 200K | $15/$75 | 高度推論・専門タスク |
Grok 4 2025年 | 93% | 60%台 | 88% | 131K | - | リアルタイム情報 |
*テスト時並列計算使用時 | データ出典:各社公式発表、第三者ベンチマーク(2025年10月時点)
料金は100万トークンあたり(米ドル)
2025年9月の大型アップデート
Claude Sonnet 4.5がコーディング性能で世界トップに
AnthropicがリリースしたClaude Sonnet 4.5は、SWE-bench Verifiedで77.2%(並列計算時82.0%)を達成し、実世界のGitHub問題解決能力でGPT-5やClaude Opus 4.1を上回りました。さらに、30時間以上の自律動作が可能で、複雑なエージェントタスクに最適化されています。価格はSonnet 4と同じ$3/$15のまま、Opus 4.1の5分の1のコストで最高水準の性能を実現しています。
Gemini 2.0 Flash Thinking:推論特化モデル
思考プロセスを見せるAI。Gemini 2.0 Flash Thinkingは、数学で73.3%の正答率を達成し、しかも無料で使えます。
2025年1月に発表された「Gemini 2.0 Flash Thinking Experimental」は、推論能力に特化した革新的なモデルです。
思考プロセスの可視化
このモデルは、プロンプトを複数のステップに分解して処理し、その思考プロセスを見せてくれます。なぜその答えに至ったのか、どんな仮定をしたのか、推論の道筋を追跡できるのです。
これはまさに、「Video Models are Zero-Shot Learners」論文で提案されたChain-of-Frames(フレームの連鎖)の言語版と言えます。
驚異的な性能向上
AIME2024(数学)
- Gemini 1.5 Pro: 19.3%
- Gemini 2.0 Flash: 35.5%
- Gemini 2.0 Flash Thinking: 73.3%
GPQA Diamond(科学)
- Gemini 2.0 Flash: 58.6%
- Gemini 2.0 Flash Thinking: 74.2%
無料で利用可能
Gemini 2.0 Flash Thinking Experimentalは、Gemini Appで無料でテストできます。さらに、YouTube、Search、Google Mapsと連携する「with apps」バージョンも提供されており、外部情報を使った推論が可能です。
なぜGemini 3が重要なのか
単なる性能向上ではなく、AIのパラダイムシフト。マルチモーダル推論の完成形、エージェント機能の本格化、そして物理世界との接続。
技術的な転換点
Gemini 3は、単なる性能向上ではなく、AIのパラダイムシフトを示す可能性があります。
マルチモーダル推論の完成形:テキスト、画像、動画、音声を統合的に理解し推論
エージェント機能の本格化:複雑なタスクを自律的に計画・実行
物理世界との接続:ロボティクスや自動運転への直接応用
競争環境の変化
OpenAIとの競争が激化することで、イノベーションが加速します。
価格競争の恩恵:高性能AIがより手頃な価格で利用可能に
オープンソース化の促進:競争圧力により技術の民主化が進む
エコシステムの拡大:Google Workspace、Android、ChromeなどGoogleエコシステム全体でのAI統合
注意:まだ公式発表はありません
Gemini 3に関する情報は、コードリポジトリの参照、業界インサイダーからのリーク、過去のリリースパターンに基づく推測です。Googleからの公式発表を待ちましょう。ただし、過去2年間の動きを見る限り、何か大きなものが準備されているのは間違いなさそうです。
ソフトウェアエンジニアがこれから備えるべきこと
AIとの協働スキル、基盤技術の理解、AIでは代替できない領域の強化、そして継続的学習。この4つが、エンジニアとしての未来を決めます。
AIの進化スピードは想像を超えています。エンジニアとして、どう対応すべきでしょうか。
1. AIとの協働スキルを磨く
AIは敵ではなく、最強のペアプログラマーです。GitHub Copilot、Cursor、Replit Agent などのAIツールを日常的に使い、プロンプトエンジニアリングを学びましょう。
実践的アドバイス:
コードレビューをAIに依頼し、セキュリティや最適化の提案を得る
アーキテクチャ設計の壁打ち相手としてAIを使う
ドキュメント作成、テストコード生成を自動化
2. AI基盤技術を理解する
Transformerの仕組み、RAGアーキテクチャ、ファインチューニング手法など、基礎を押さえておくことが重要です。
学習リソース:
Hugging Faceのチュートリアル
「Attention Is All You Need」論文を実装してみる
LangChain、LlamaIndexなどのフレームワークを触る
3. 「AIでは代替できない」領域を強化
AIは実装は得意ですが、問題定義、要件定義、ステークホルダーとのコミュニケーションは人間の領域です。
ビジネス理解力を深める
プロダクト思考を身につける
チームマネジメント、技術リーダーシップを磨く
倫理的判断、リスク評価の能力を養う
4. 継続的学習の習慣化
AI分野は月単位で進化しています。週に1本は最新論文やブログをチェックする習慣を。
arXiv、Papers with Codeを定期チェック
AI研究者のTwitter/Xをフォロー
小さくても良いので、毎週何か新しいAIツールを試す
AIの民主化:オープンソースの力
高性能モデル、強力なフレームワーク、無料の知識。誰でも最先端のAI技術にアクセスできる時代が到来しています。
重要なのは、これらの革新技術が徐々にオープンソース化されていることです。
モデル
Llama 3、Mistral、Gemma、Qwen など、高性能なオープンソースLLMが続々登場
フレームワーク
Transformers、LangChain、LlamaIndex など、誰でも使える強力なツール群
知識
主要な論文はすべて無料公開。実装例もGitHubに溢れている
つまり、誰でも最先端のAI技術にアクセスできる時代なのです。重要なのは、それをどう活用するかというビジョンとアイデアです。
私たちは歴史の転換点にいる
2017年の「Attention Is All You Need」がすべてを変えた。2025年の「Video Models are Zero-Shot Learners」が次の扉を開こうとしている。そして2027-2030年、AGIが現実になるかもしれない。
この変化の波に乗るか、飲み込まれるか。選ぶのは私たち自身です。
もっと深く知りたい人へ
学術論文、実装例、信頼できる情報源。さらに深く学びたいあなたのために、厳選したリソースをまとめました。
重要論文リスト
1. Attention Is All You Need - Vaswani et al., 2017(Transformer提案論文)
2. Video models are zero-shot learners and reasoners - Wiedemer et al., 2025(動画AIの基盤モデル化)
3. Language Models are Few-Shot Learners - Brown et al., 2020(GPT-3、創発的能力)
4. Scaling Laws for Neural Language Models - Kaplan et al., 2020(スケーリング則の発見)
5. Training language models to follow instructions with human feedback - Ouyang et al., 2022(InstructGPT、RLHF)
6. Chain-of-Thought Prompting - Wei et al., 2022(推論能力の向上)
作成日: 2025年10月 | 全データは査読済み学術論文および信頼できる学術情報源に基づく
主要な学術リソース
arXiv.org - AI論文のプレプリントサーバー
Papers with Code - 論文と実装をセットで提供
Hugging Face - モデル、データセット、実装
OpenAI Research - 最新のAI研究動向
日本語の信頼できる情報源
WIRED.jp - AI技術とその社会的影響
AINOW - AI専門ニュースメディア
日経ビジュアルデータ - データで見るAI動向
日経クロストレンド - ビジネス視点のAI分析
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