生存者バイアスの具体例|SNSで成功者ばかり見える本当の理由
雑学 15 min read

生存者バイアスの具体例|SNSで成功者ばかり見える本当の理由

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karrinn

著者

SNSで成功者ばかり見ちゃうのって、なんでだろう?

インスタで幸せそうな人ばっかり。起業して成功した人の話しか聞かない。
それ、「生存者バイアス」が原因かも。

😭

こんな経験ない?

インスタ開いたら、みんなキラキラしてて「私だけ取り残されてる...?」って不安になる。起業した友達の成功話ばっかり聞いて、「自分もいけるかも!」って思っちゃう。

💡

実は...

それ、「見えてない失敗」がめちゃくちゃ多いだけなんです。心理学では「生存者バイアス」って呼ばれる認知の罠。この記事で、日常の「あるある」から対策まで解説します。

📌 この記事のポイント

生存者バイアスとは: 成功した人・物だけが目に入って、失敗した大多数が見えなくなる認知の歪み

影響: SNS、恋愛、買い物、キャリア選択など、日常のあらゆる場面で判断を誤らせる

対策: 「見えてない失敗」を意識的に探す。統計データを確認する。完璧主義から卒業する

日常で起こる「生存者バイアス」あるある

あなたも経験してるかも?20-30代が陥りやすい4つのシーン

💔 シーン①: 恋愛・人間関係

「みんな幸せそうなカップルばっかり...」

インスタやTikTokを開くと、ラブラブなカップルの投稿ばかり。「私だけうまくいってないのかな」って落ち込んじゃう。でも考えてみて。

実際には...

  • 別れたカップルはSNSから投稿を削除する

  • 喧嘩中や倦怠期のカップルは投稿しない

  • そもそもシングルの人は恋愛投稿をしない

2013年の研究では、ソーシャルメディア上でアーティストの91%が発見されず、メインストリームや大規模な成功を収めているのはわずか1.1%だけという結果も。これは恋愛でも同じ。「成功例」だけが見えているんです。

💼 シーン②: 起業・キャリア

「大学中退して起業した人、みんな成功してるよね?」

Steve Jobs、Bill Gates、Mark Zuckerberg...有名な起業家って大学中退者多いよね。「学歴なくても大丈夫じゃん!」って思っちゃう。

でも実際には...

  • 90%のスタートアップが失敗するという統計がある

  • 中退して失敗した人の話は報道されない

  • 成功者の「運」や「タイミング」は語られない

参考: The Decision Lab - Survivorship Bias

📱 シーン③: SNS・情報収集

「この商品、口コミめっちゃいいから買お!」

Amazonのレビューが★4.5。「これは間違いない!」って購入。でも届いたら「思ってたのと違う...」ってことない?

見えていないもの:

  • 不満な人は即返品してレビューを書かない

  • サクラレビューが混ざっている可能性

  • 低評価は削除されることもある

SNSでは生存者バイアスが、成功、達成、美、イメージの基準を大きく歪めているという指摘も。

💰 シーン④: 買い物・投資

「この投資信託、10年で200%のリターン!」

投資の広告で「過去10年の実績」を見て、「こんなに儲かるんだ!」って飛びつく。でもちょっと待って。

実は...

  • 運用成績の悪いファンドは途中で廃止され、データから除外される

  • 「生き残った」優秀なファンドだけが統計に残る

  • 本当の平均リターンは広告よりずっと低い

参考: Britannica - Survivorship Bias

そもそも「生存者バイアス」って何?

生存者バイアス(Survivorship Bias)とは、選択プロセスを通過した(つまり「生き残った」)人・物だけに注目してしまい、脱落した人・物を無視することで、間違った結論に至る論理的エラーのこと。

簡単に言うと、「成功例だけが見えて、失敗例は見えない」状態。これが私たちの判断を大きく歪めちゃうんです。

この概念が有名になったのは、第二次世界大戦中の爆撃機の研究から。詳しくは次のコラムで紹介します!

90%

スタートアップの失敗率

Forbes調査

1.1%

SNSで成功するアーティストの割合

2013年研究

🎖️ 歴史コラム: 爆撃機の装甲はどこに付ける?

第二次世界大戦中、アメリカ軍は爆撃機の生存率を上げるため、統計学者Abraham Waldに相談しました。

帰還した爆撃機を調べると、翼・胴体・尾翼に弾痕が集中。軍は「ここを補強しよう!」と考えました。

でもWaldは...

💡 Waldの洞察

「待ってください。帰還できた機体を見ているんですよ。弾痕が多い場所は『撃たれても大丈夫な場所』です。」

本当に補強すべきは、帰還した機体に弾痕が『ない』場所。そこを撃たれた機体は墜落して戻ってこなかったからです。

参考: Wikipedia - Abraham Wald's Survivorship Bias Analysis

なんで生存者バイアスにかかっちゃうの?

理由①: 失敗は「見えない」

失敗した人は...

  • SNSアカウントを削除する

  • 失敗談を積極的に発信しない

  • 倒産した企業は統計から消える

  • メディアは成功談を好んで報道する

理由②: 脳の認知メカニズム

確証バイアスとの相互作用:

  • 成功を信じたい → 成功例を探す

  • 失敗は「不快」→ 無意識に避ける

  • 「自分もできる」と思いたい心理

成功は快適で、失敗は不快。だから成功だけを見てしまうのは自然なこと。でも、それが判断を歪めるんです。

生存者バイアスが引き起こす3つの問題

😤

① 過度に楽観的になる

成功のサブセットだけを見ることで、現実よりも物事が簡単だと信じてしまい、不必要に大きなリスクを取ってしまう

😰

② 自己評価が下がる

SNSの生存者バイアスは、幸福と健康に対する基準を歪め、自己評価を低下させる。「みんな成功してるのに私だけ...」という錯覚。

③ 誤った因果関係

成功者のパターンから誤った因果関係を導き出す。「大学中退=成功」のような短絡的な結論に。

じゃあ、どうすればいいの? 実践的な対策

生存者バイアスから抜け出す5つの方法

✅ やるべきこと

1. 「見えない失敗」を意識的に探す

成功者1人の裏には、失敗者が何十人・何百人いることを意識。失敗した事例も研究に含めるのが大切。

例: 起業を考えるなら、成功談だけでなく「なぜ失敗したか」のケーススタディも読む

2. 統計データを確認する

感覚ではなく、数字で判断。「90%のスタートアップが失敗」のような客観的データを見る。

参考: Scribbr - Survivorship Bias Research

3. 「運」と「実力」を区別する

成功者の墓場にも、失敗者と同じく勇気、リスクテイク、楽観主義があった。真に分けるのは運だというNassim Talebの言葉を思い出そう。

❌ 避けるべきこと

1. SNSを「現実」と思い込む

インスタはハイライトリール。みんなの「ベストモーメント」だけが集まった場所。

対策: SNSの使用時間を制限する。1日30分以内にするなど。

2. 成功談だけを参考にする

成功の公式は保証されていない。同じ戦術を使っても、運や制御できない要因で結果は変わる

例: 「この人がやって成功したから、私もやれば成功する」は危険

3. 完璧主義になる

SNSで見る「完璧な人生」は存在しない。生存者バイアスは失敗を汚名化し、それが自然なプロセスの一部であることを忘れさせる

意思決定チェックリスト

大きな決断をする前に、この3つを自問してみて:

CHECK 1

「失敗した人のデータも見てる?」

  • 成功率は? 失敗率は?

  • 失敗した人の話も聞いた?

CHECK 2

「サンプルサイズは十分?」

  • 1-2人の成功談だけで判断してない?

  • 統計的に有意なデータはある?

CHECK 3

「運の要素を考慮してる?」

  • タイミング、環境、人脈などの「運」の部分は?

  • 再現性のある「実力」の部分は?

💻 補足: エンジニアの現場でも起こる生存者バイアス

ここからは、私が実際にソフトウェアエンジニアとして経験した「生存者バイアス」の話を。

ケース①: バグレポートの罠

あるプロジェクトで、「この機能、バグ報告ゼロだから完璧だね!」って上司が喜んでたんです。

でも実際は...

  • ユーザーがその機能を使っていないだけだった

  • バグで動かなすぎて、諦めて他の方法を使っていた

  • 報告フォームが分かりにくくて、誰も報告してなかった

「報告がない = 問題ない」じゃないんですよね。生き残った(報告された)バグだけ見てると、全体像を見誤る。

ケース②: パフォーマンステストの落とし穴

サービスの速度改善をする時、「現在のユーザー」のデータだけで分析してました。

でも、そのデータには...

  • 「遅すぎて離脱したユーザー」が含まれてない

  • 高速回線の環境のユーザーに偏っている

  • 古いデバイスのユーザーは既に脱落済み

つまり、サービスを使い続けられる環境のユーザーだけのデータだったわけです。

対策として、離脱率の高いページのデータを重点的に収集し、「生き残れなかったユーザー」の体験を推測するようにしました。

🔍 エンジニアへのアドバイス

  • ログに残らないデータを想像する力が大事

  • A/Bテストでは「脱落ユーザー」も含めて分析

  • 「なぜこのデータが取れたのか?」のバックグラウンドを常に考える

よくある質問

Q1: 成功者の話を聞くのも無駄なの?

A: 無駄じゃない!でも「文脈」が大事

成功者の話は確かに参考になります。ただし:

  • 「この人だからできた」部分と「再現可能」な部分を分ける

  • 時代背景やタイミングの要素を考える

  • 失敗談も同じくらい聞く

Q2: SNSやめた方がいい?

A: やめる必要はない。でも「使い方」を変えよう

おすすめの使い方

  • 1日30分以内に制限

  • フォローするアカウントを厳選

  • 「見るだけ」ではなく「交流」重視

避けるべき使い方

  • 寝る前の無限スクロール

  • 他人と自分を比較しまくる

  • 「完璧な生活」を追い求める

💡 覚えておきたいこと

生存者バイアスは人生に適用されたInstagramのフィルターのようなもの。美しいもの、輝くもの、成功したものだけを見せる。でも現実はもっと豊かで、複雑で、面白い

データで見る生存者バイアス

図1: スタートアップの生存率(年数別)
出典: The Decision Lab

図2: SNSでの成功者の割合
出典: 2013年研究データ

まとめ: 「見えないもの」を意識しよう

SNSで成功者ばかり見えるのも、起業の成功談ばかり聞くのも、生存者バイアスのせい。大切なのは、「見えない失敗」の存在を忘れないこと

完璧な人生なんて存在しない。みんな試行錯誤してる。

もっと詳しく知りたい人へ: おすすめリンク集

主要参考文献

作成日: 2025年10月 | 全データは査読済み学術論文および信頼できる学術情報源に基づく

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